封筒が伝えた嬉しいインスピレーション

封筒を見て、全身から汗が噴き出すような経験をしたのは、後にも先にもこの1度きりでしょう。
それは、大学の合格通知の封筒が届いた瞬間の経験です。
今思えば、あの封筒を見た瞬間から、今の自分がスタートしているような気がするのです。

大学受験より先に経験した高校受験は、合否の発表が電話連絡でした。
合格者ではなく、不合格者の自宅に電話連絡が入るのです。
生まれて初めて経験する合格発表は、「何も連絡がないこと」で知らされるものでした。
それは正直、嬉しくもあり、複雑な感情を抱くものであったことを今でもよく覚えています。
初めて挑む受験のため、全身全霊で取り組んだ受験勉強の結果を知らせるものが、「何もない」というのは寂しくもありました。
だからと言って、その後受け取った正式な合格証明書が封書で送られてきたわけでもありません。
入学説明会か何かで手渡しされたものでした。
自分と違う高校を受験した友人の中には、その知らせを封筒で受け取った人もたくさんいました。
合格通知の封筒を片手に、合格を喜ぶ友人を見て、すごく羨ましく思ったものです。
だからこそ、人生でそう何度とこないこんなに嬉しい知らせを、自分も「封筒」という形で受け取ってみたいという密かな憧れがあったのです。

合格を知らせる通知は、もちろん受験だけではないでしょう。
就職試験の採用不採用の通知、オーディションの合否の通知、コンクールなどの当選落選の通知など、その合否の通知を封筒で知らせるパターンはこの世にたくさんあるはずです。
いつかその嬉しい知らせを、封筒で受け取ってみたい。
高校受験を終えた時から、そんな気持ちを抱いていました。
そんな気持ちを抱いたまま、次に臨んだのが大学受験。
大学受験は、受験できる学校のその数で言えば、高校とは比べものになりません。
だからこそ、合格の通知を封筒で受け取るチャンスはたくさんあったはずなのです。
絶対に合格通知を大学受験で受け取るんだ。
そんな誰に話すほどのことでもない小さな小さな野望を、心の中に抱いて臨んだ大学受験だったのです。
インターネットという便利な通信手段が世の中に浸透している現代。
近年では大学の合格発表も、その大学のホームページから確認できたりするのだそうです。
当時の自分からは、そんな時代がやってくるなんて想像もできませんでした。
受ける大学が遠方の場合は、必ず合否の知らせを郵便で受け取る手続きをしました。
ところが、現実は厳しいものです。
その嬉しい知らせを受け取る機会がなかなかやってこないのです。
受験した大学から、合否の通知を知らせる封筒を何度受け取っても、結果は不合格。
いくつもの大学を落ち、合格通知を封筒で受け取るなんて野望、もうどうでもよくなったりしていました。
大学を落ちたという現実が重すぎて、それどころじゃなくなっていたのです。
そんな時にようやく受け取った封筒が、自分が待ち望んでいた念願の封筒でした。
自分には、第六感的な感覚を感じるような経験はもちろんありません。
ですが、この時ばかりは違ったのです。
自宅の郵便受けに届けられたその封筒を見た瞬間、鼓動が高鳴り、緊張感で体じゅうが熱くなってきたのです。
肝心な中身の合否はわからないのにです。
首筋から背中にかけてじわじわと汗が吹き出し始め、郵便受けを開けるその手が震えたことを、昨日のことのように覚えています。
なかなかない体験をしたからこそ、記憶に深く刻まれているのです。
その封筒に、今まで体験したことのない第六感的な何かを感じ取ったのでしょう。
「合格だ」と、封筒を見た瞬間にインスピレーション的な何かを感じ取ったからこそ、体がそんな反応を見せたのです。
中を見てみると、予想通りの合格通知でした。
やっと夢にまで見た光景を経験した瞬間でした。
その時の印象が強すぎて、合格を知らせてくれた封筒の色、形、大きさ、宛名のシールまですべてが記憶に刻まれています。
自分の人生の中で、1番強烈な印象を与えた封筒なのです。
この大学の合格通知を受け取ることができたからこそ、今の自分はあるのだと思えてなりません。
こんなに強烈な印象を与えてくれた封筒。
これから先の人生で、またそんな封筒に出会える日が来ることを楽しみに生きていきたいです。