封筒とおばあちゃんの思い出

私の母方のおばあちゃんは、手先が器用な人でした。
裁縫や編み物も得意で、私にジャンパースカートを作ってくれたり、カーディガンや手袋を編んでくれました。
私の両親は共働きで忙しくしていたので、学校から帰ってきて、友達と遊ばない時はいつも祖母と一緒に過ごしていました。

ある日、学校の授業で、遠方に住んでいる父方の祖父母に手紙を送ることになりました。
たしか手紙と絵を中に入れたのですが、封筒は親に送り先の住所を書いてもらって、学校へ持って行くことになっていました。

私はその封筒の準備をすっかり忘れていました。
思い出したのは、夜遅くになってからでした。

当時、封筒などの文房具は本屋さんに売っていました。
本屋さんは夜7時になると閉まっていました。

他に封筒を取り扱っているのは、郵便局しかなく、その郵便局は夕方5時には閉まっていました。

幸い、家には普通の茶封筒がありました。
母がその茶封筒を、祖父母の手紙を入れる封筒にしようとしました。
しかし、私は学校で友達に「かわいい封筒を持っていく」と話していました。
そのため、茶封筒なんて絶対に嫌でした。

私はそんな封筒を持っていくぐらいなら、封筒を忘れたことにすると言って泣きました。

母とケンカをしていると、祖母が「こっちにおいで」と手招きしました。
私は「おばあちゃんがかわいい封筒を持っていたんだ」と思い、祖母の元へ行きました。

祖母の元へ行くと、期待していた封筒は無く、代わりに色鮮やかな千代紙と水のりが置いてありました。
祖母は「無いものをねだって泣くんじゃなくて、欲しかったら作ればいいの」と私に言いました。

封筒を作るという考えが全く無かったので、私は本当に封筒が作れるのかあまり信じていませんでした。

祖母は慣れた手つきで、物差しとハサミを使って、千代紙を切っていきました。
最後にのりを付ける段階になってから、私に「いっぱい付けると、引っ付いて封筒に手紙が入らなくなるから、少しだけ付けるんだよ」と教えてくれました。
のりをつけて、しばらく乾かすと、千代紙でできた封筒が出来上がりました。

出来上がった封筒に、母に祖父母の住所を書いてもらい学校へ持っていきました。
千代紙でできた封筒は、とてもステキだと思っていましたが「友達は私の封筒を見て、なんて言うだろう。みんなはもっとキャラクターが書いてあるかわいい封筒を持ってきているんじゃないかな」と不安でした。

学校へ行くと、はやりのかわいいキャラクターが書いてある封筒を持ってきている子や、花柄や、動物の柄が書いてある封筒を持ってきている子がいました。
私と同じ、千代紙や和紙で出来た封筒を持ってきている子は、誰もいませんでした。

友達が「どんな封筒を持ってきているの?」と、私の封筒を見にきました。
私の千代紙で出来た封筒を見て「スッゴイキレイ。高そう」と言ってくれました。
他の友達も「すごい。すごい」と言ってくれました。

「変って言われたらどうしよう」と不安だったので、友達がみんなホメてくれたので、とっても安心しました。
みんながホメてくれると、とたん自慢気な気分になって「いいでしょ?自分で作ったんだよ」と、私は封筒を見せびらかしていました。

私は家に帰ってから、祖母に「学校で、みんなスゴイスゴイって大人気だったよ。封筒また作ろうね」と言いました。
祖母もそれを聞いて「よかったねー」と喜んでいました。

それから、数日経って、遠方に住んでいる祖父母から、手紙が着いた連絡が来ました。
祖父母は、封筒が手作りだとは気付いていませんでした。
「あんなキレイな封筒、売ってたんだねぇ」と関心していました。

私が手作りだと言うと、とても驚いていました。

あれから何年も経ちますが、今だに封筒を見るとその時のことを思い出してしまいます。
封筒を作った時に、祖母が言った「欲しい物をねだらずに、作る」という考えは、今も強く印象に残っています。
誰かにどうにかしてもらうのではなく、自分で努力するという考え方ができるようになったのは、その時の経験が大きかったです。

将来、私に子供や孫が出来たら、祖母の思い出を話しながら、一緒に封筒を作りたいと思っています。