病気により入院していた同級生へ作った手作り封筒の想い出

私は子供の頃から自分の感情や思っている事を、口に出すのも文字にするのも本当に苦手でした。
元々気にしいな性格なので、「失礼な事を言っていないか、気に障るような事を書いてはいないか」と心配になってしまうのです。
だから手紙というものも本当は苦手で、遠くへ引っ越した友達から時折貰う事はあっても、自ら進んで書く事は容易ではありませんでした。

しかし私が高校生の頃の事。同じクラスの女の子が急性白血病にかかり、入院を余儀なくされました。
高校3年生に進級してすぐの知らせで、クラスは大混乱かと思いきや、実はその女の子は高校2年の終わりに転校してきた子なので皆あまり関わりがなかったのです。
転校してきてすぐ体調を崩し休みがちになったので、クラスだけではなく学校全体がその子の事をよく知りませんでした。
だから「同級生が白血病と言う重篤な病により入院」というショックと、「あまり親しくない子なのでどうリアクションをしていいか解らない」という戸惑いの空気が流れていました。

その空気感を知ってか知らずか、担任教師は「入院した同級生へクラスの皆から手紙を書いて励まそう」と言いました。
乗り気な生徒半分、未だ戸惑っている生徒半分でしたから、空気に流されるまま書き始めたと記憶しています。

担任の受け持ちである授業を1時間、手紙を書く時間としてあて、私も皆も思い思いの手紙を書きました。
手紙の便箋も封筒も担任が用意した物でしたが、ふと、何だかそれって味気ないなと感じました。
だから何気なく「先生、封筒を作ってもいいですか?」と尋ねました、便箋に自作のイラストを描く子もいたので、それなら封筒も自作してはと思ったのです。

何気ない提案でしたが、担任にも他の生徒にも受け入れられ、早速その日あったPCの情報授業の担当教師へ担任から話しを通してもらい、封筒を作りました。
描いた絵をスキャナーで取り込む者もいれば、PCに入っているペイント機能で器用にイラストを描く者、携帯に入っている画像をPCへ取り込む者もいました。
私は学校の裏庭に生えていたタンポポやスミレの花、綺麗な形の葉をスキャナーで取り込んで、押し花風デザインの封筒を作ったのです。

封筒のひな型はPCの情報授業の担当教師がネットで無料の物を見つけてくれ、それをプリントアウトして、封筒の型に紙から切り抜きます。
そして封筒の白紙部分に各自色をつけたり絵や写真を貼りつけたりしてデザインし、糊付けをして完成です。

作ってみるとなかなか面白く、そしてオリジナルの封筒がこんなに簡単にできるという事で、私も他の生徒も「楽しい」と気持ちが1つになったように思いました。
封筒を作るとそれに入れる手紙にも愛着が沸いてくるもので、最初に書いたものは没にして、新しく書き直す生徒も多かったです。
封筒のおかげなのか、自然と手紙の受け取り主である女の子へ伝えたい気持ちがすらすら出てきて、手紙を書く事が苦痛ではありませんでした。

皆で書いた手紙をそれぞれ自作の封筒へ入れて担任に預け、入院している同級生の女の子へと届けられました。
「読んでくれるかな」、「封筒、気に入ってもらえるといいな」と皆そわそわしていたのが何だか可笑しかったです。
封筒を作る前は皆、「どう対応していいのか解らないモヤモヤ感」を抱えていたのに、封筒が女の子と私達を繋いでくれるような気さえしました。

手紙を預けて2週間後、同級生の女の子からクラスの1人1人へと手紙が送られました。
手紙に書いていた話題について反応してくれたり、封筒可愛いねと書いてあったりと、返事がとても嬉しく感じたのです。
担任は「○○さんのご両親も喜んでくださっていた。本人も入院生活や闘病の辛さも忘れられるからと、毎日ちょっとずつ書いてくれたらしい」と教えてくれました。
私達もそれを聞いて、1回きりにしたくない、何度も手紙を交わして同級生の女の子が辛い気持ちにならないようにしてあげたいと思ったのです。

それからというもの、卒業するまでの1年間、1ヶ月に1回クラスで手紙を書いて封筒を作っては女の子へ届けてもらうと言う文通を続けました。
皆、何度も封筒作りをする内にちょっと変わった仕掛けを施したりと、面白いアイデアの封筒をあみ出していったのです。
便箋にこだわる子もいたりして、封筒作りからクラスの仲が本当に良くなったと感じました。

入院している女の子は体調が良い時に手紙の返事を書いてくれているようで、そして自分でも封筒や便箋を手作りしている様子でした。
お見舞いにもクラスの代表として2人ずつ交代で何度か行き、「あの封筒ってどうやって作るの?」なんて会話もしました。

最初は弱々しかった字も、いつしか力強い字になっていて、担任からも「少しずつ顔色が良くなっていっている気がする」と言われたのです。
白血病は骨髄移植が成功すれば回復する、治るものだと聞いていましたが、身近でそんな病にかかっている人はいなかったので不安でした。
でも私達が手紙を届けるようになって、交流するようになってから少しずつ気力を取り戻して辛い治療にも耐えていると聞き、力になれたなら良かったと感じたのです。

同級生の女の子は私達が在学中に登校する事は1度もありませんでしたが、その後、骨髄移植が成功して復学したと聞きました。
卒業後も各自手紙やお見舞いでやり取りを続けている同級生は多く、最初はよく知らなかったあの子もすっかりクラスの一員です。
大人になった現在はすっかり元気になったあの子と他の同級生達と担任で、何度か同窓会を開いています。
話題に出るのはあの頃交わした手紙や封筒の事。お互いに貰った手紙をずっと大切に取っておいているのです。

現在の私はすっかり手紙好きになり、他の友達へも封筒を自作しては手紙を書いて送っています。
夢だったデザイン関係の仕事にも就き、そこで小学生〜中学生の子供達を対象としたレターセットのデザインも作っています。
私の作った便箋に自分の気持ちをしたためて、そして封筒にその想いを入れて大切な人へと送ってくれると本望だと感じています。