どこへ行ってしまったの?私の大事な封筒

「封筒」というと、私には思い出しても顔の赤くなるような思い出があります。
実家から離れ、県外の短大に入学した私。卒業後は短大の時にお世話になったゼミの先生から「この仕事やってみない?」と声をかけていただいた仕事に就きました。その職場は学校から近いところにありましたので、親元に帰ることなくそのまま県外にひとりで住んでいました。その頃、私には結婚を前提に付き合っている彼氏がいましたので、親元から遠くても寂しいと感じることもなく元気いっぱい過ごしていました。ところが数年経つうちに、色々あってその人との結婚はあきらめ、実家の近くに引っ越すことになりました。私が25歳の頃のことでした。
実家は地方の中でも人口の少ないM市にあります。近くには私の望むような仕事はありませんでしたので、県庁所在地の大きなN市で仕事を探すことにしました。知り合いのつてを頼ったり、ハローワークに通ったりと色々な方面から探し、何とか思うような職場が見つかり、面接試験を受けることになりました。
その職場があるN市には何度か遊びに行ったことはあったけれど、土地勘もなく交通手段も詳しくありませんでした。面接試験の前日は近くにある友達の家に泊めてもらい、前もって道のりをいろいろと調べたり、試験の当日には、歩いている人に道を聞いたり、バスの案内所の方に聞いたりしながらN駅からバスを乗り継ぎ、何とか会場までたどり着くことができました。
面接で何を聞かれたのか、25年も前のことなのでほぼ忘れてしまっていて思い出せませんが、とにかく合格することができました。とてもほっとしたのを覚えています。そして、その日のうちに入職の準備のための様々な書類が入ったA4サイズの封筒を渡されました。
良かったなあ。と合格の実感をかみしめながら封筒を片手に持ち、試験会場をあとにして、また慣れない道のりをバスに乗り、駅まで戻りました。ところが、駅に着いた時です、試験会場で渡された封筒がないことに気付いたのです。あのベンチに座った時かなとベンチを探してみましたがありません。
もしかしたらバスの中に忘れてしまったのかも。と思い、とにもかくにもバスの案内所に戻りました。そして、受付のおばさんに事情を話すのですが、なんせ土地勘がありませんし、帰りは行きのバスと違って緊張感が緩んでいたので、バス停に書かれていた文字もあまりよく見ずに「N駅行き」だけを確かめて乗ったのですから、どこから乗ったのかはっきりしません。それでも、何とか記憶をたどり、案内所のおばさんにも協力してもらって、「この路線だろう。」ということがわかり、封筒が見つかったら連絡をくださいとお願いしてその場を去るしかありませんでした。
それから、また友達の家に戻りました。帰って友達に事情を話すと、「大人になってそんな失敗する人いるんだねえ。」とあきれられ、私自身も自分のバカさかげんに腹がたちました。でも、とにかく封筒がみつかってくれさえすればいいんだ。と思い直し、電話が鳴るのを待ちました。他の人の職場の入職準備の書類が入っている封筒なんて持っていく人がいるわけないし、封筒がバスの中に置き忘れてあったとしたらきっと運転手さんが見つけてくれるはず。そう思って、自分を励ましていました。
ところがいくら待っても電話が鳴ることはありません。徐々に不安になってきた私は、とうとう待ちきれずにバス会社に電話してみました。すると「何度も探してみたんですけどねえ、その封筒なかったんですよ。」と申し訳なさそうな声。私は、お礼を言って電話を切るのがやっとでした。
そして、それから恥をしのんで、これから勤める予定の職場に電話して書類の入った封筒を無くしてしまったことを、謝罪方々伝えました。少し呆れながらも笑って許して下さった事務のお姉さん、本当にありがとうございました。
それにしても、あの封筒はどこに行ってしまったのでしょう。25年経った今でも不思議な気持ちで思い出すことがあります。